「ユスリカ=汚い水にいる赤い虫」と思っていませんか?どうも汚い水のイメージが定着しているようですね。あの赤い虫もたしかにユスリカの幼虫です。でも,ユスリカの種類は日本だけでも1000種類近くもいますが,幼虫が赤いのはそのごく一部だけです。大部分は白っぽくてきれいな水にすんでいます。赤いユスリカの幼虫はアカムシといって,釣りの餌として売られていますね。あれは富栄養化した湖水にいる「アカムシユスリカ」という種類です。
では,成虫はどこに?
春から秋にかけて,朝や夕方に「蚊柱」がたっているのを見たことがありますか?あれはカ(蚊)ではなく,たいがい,ユスリカなのです。あのように群をなしているのは雄だけで,近くにいる雌が飛び込んできて交尾します。つまり「蚊柱」は交尾のための生殖行動です。成虫は,カのように人を刺したりは絶対しません。成虫の口はほとんど退化していて,ものは食べないと考えられています。幼虫時代は種類によって1ケ月から2年。成虫の寿命はだいたい数日ですから,子孫をのこすために羽化するわけです。成虫の翅は2枚しかなく,カやハエのなかま(ハエ目=双翅目)です。大きい種類でも1cmくらいで,小さい種類では1mmほどです。
なぜ今ユスリカ?
ユスリカはカのようにはっきりした「害虫」でもなく,チョウのようにきれいでもなく,また,トンボのような「益虫」でもないので,「ムシ」されてきました。本格的に研究が始まったのは数十年前からです。とくに注目されはじめているのは,きれいな水,汚れた水など,いろいろな環境に,それぞれ違う種類のユスリカがいることが分かってきたことです。つまり,「環境指標性」です。なぜある種類が特定の環境に多いのか?音や色に対してどのように反応するか?年によって増減するのはなぜか,など多くの研究者が取り組んでいます。またアレルゲンとしても注目されています。このような研究を進めるためにはどうしても,どんな種類がいるのかをはっきり知らなければなりませんので,分類学も精力的に進められています。
ユスリカの雄成虫(Chironomus flaviplumus)
ユスリカの雌成虫(Chironomus flaviplumus)
ユスリカの蛹(Chironomus flaviplumus)
ユスリカの幼虫(Chironomus flaviplumus)
ユスリカの卵(卵塊)(Chironomus flaviplumus)